STYLE BREAD

導入事例Case

2024.11.20

食品ロス率の約20%削減に成功。付加価値にフォーカスした食材選びとは|パレスホテル大宮×スタイルブレッド

アイキャッチ用画像_2 (1).jpg

新幹線をはじめ多くの鉄道が乗り入れるターミナル駅、大宮のランドマーク「パレスホテル大宮」。開業以来36年にわたり地元に根ざしたホテルとして親しまれています。

「食材一つひとつが料理になるまでの物語を大切にしている」と語るのは、パレスホテル大宮の総料理長を務める毛塚智之シェフ。厚生労働省が選出する「現代の名工」を受賞するなどフレンチ界を牽引する毛塚シェフに、スタイルブレッドとの出会いや食材選びにかける想いをお聞きしました。


埼玉に開業して36年、地域に愛される「パレスホテル大宮」

other_03.jpg

―よろしくお願いします。早速ですが「パレスホテル大宮」についてご紹介いただけますか。

毛塚シェフ:パレスホテル大宮は、1988年に開業しまして今年で36年目になります。地元、大宮の人々に愛されるホテルを目指して運営してきました。開業当初から、地元人材の雇用をはじめ、地域とのつながりを大切にしています。

料理も全国の食材を使ってはいますが、地域の生産者さんとともに地産地消への取り組みも開業当初から続けています。最近ではトレビスなどヨーロッパ品種の野菜の生産が盛んで、「埼玉ヨーロッパ野菜」として全国に出荷もしています。

―ありがとうございます。毛塚シェフは「現代の名工」も受賞されていますが、シェフのご経歴もお聞かせいただけますか。

毛塚シェフ:高校卒業後に九段下のグランドパレスホテルに入社しました。料理の道を志して入社したものの、当時厨房のスタッフは充足していたので、なかなか厨房の仕事につけず、最初は客室係からのスタートでした。

今はホテルの客室清掃などは外部の業者に委託することが多いと思いますが、当時は自社のスタッフがベッドメイクや浴室の掃除まで対応していましたね。

しばらくして、現在のパレスホテル東京が運営している「エルバ」という赤坂のレストランに配属になりました。そこでも厨房には入れずサービス担当だったのですが、当時のシェフがある日「レストランがオープンする前の11時までだったら厨房に入ってもいい」と言ってくれました。

そこから毎朝、始発電車にのって職場に通いましたね。朝6時前に厨房に入って11時まで働かせてもらって。11時にレストランがオープンするとサービススタッフとして働く、そんな日々でしたね。

その後、パレスホテル東京に配属となりメインダイニングの厨房に入ることができました。20名ほどの新人スタッフのなかから数名の選出だったのですが、後になって「一番、身だしなみが良かったから選んだ」と聞いて以来、身だしなみを整えることには気を付けています。

―お客さまの満足度のために大切にされていることやこだわっていることはありますか?

毛塚シェフ:そうですね。パレスホテルというと伝統的なイメージを持たれる方が多いと思います。もちろん今のパレスホテル東京も含めて、伝統の料理を守っているところもありますが、そのなかでも時代に合ったもの、世の中のニーズにマッチするものを料理にも取り入れていくことを大切にしています。

今から4~50年前、フランス料理が日本に普及しはじめたころは、どちらかというとバターやクリームをたっぷり使ったリッチなものが一般的でした。しかし、世の中が健康志向になるにつれてフランス料理も野菜のソースなど、ヘルシーで軽いテイストが増えてきました。

伝統を継承することももちろん大切ですが、革新とういう意味で時代に合う料理を提案していく、新たに食文化をつくっていく必要があると思います。

食材を生産する過程の「物語」も価値になる

other_02.jpg


―お客さま側も食材のルーツや調理法に関心の高い方が増えたように感じます。食材選びでこだわっていることはありますか?

毛塚シェフ:そうですね。全国さまざまな食材の産地へ足を運びますが、どの食材も生産者さんは自信をもって生産されています。日本各地に素晴らしい食材はたくさんありますが、それをどんなシーンで使いたいのか、お客さまにどう感じてほしいのかに合わせて料理で表現するのがシェフの力量です。

食材ごとに、一番いい状態、いい風味だったり香りだったり、逃してはいけないタイミングがあるのでそこを目利きするのも料理人の醍醐味でしょうか。

料理を召し上がるお客さまも、それが分かる時代になっていると思います。今はおいしいだけでは成り立たなくて、そこにプラスアルファの価値がないと難しいですね。食材一つひとつの物語を、お客さまにどう伝えていくのかも大切です。

例えば、コーヒー1杯にもたくさんの物語があって。遠い国の貧しい子どもたちの労働のうえでコーヒー豆の栽培が成り立っていたり、1日にほんのわずかしか取れずに供給が不安定だったり。その食材の背景を知ることで、目の前の料理の味わいや感じ方も変わってくるのではないでしょうか。

―スタイルブレッドも初めてのお客さまに商品をご案内する際に品質はもちろん、作り手の想いやこだわりをしっかり伝えるよう心がけています。スタイルブレッドとの出会い、第一印象を教えてください。

毛塚シェフ:パレスホテル大宮では、開業当初スペースの問題でベーカリーを作りませんでした。そのため、当時は埼玉の老舗のベーカリーにパレスホテルのレシピを渡して、オリジナルのパンを作っていただいていました。

そのパン屋さんがお店を閉めるということで、新たにパンを探していたときに出会ったのがスタイルブレッドです。当時はまだパンのブランドというイメージはあまりなかったですね。群馬県にあるパン屋さんなんだなという印象でした。ハード系が得意なパン屋さんのイメージが強かったですね。

冷凍食材の可能性と、顧客満足度・労働環境への影響

other_06.jpg

―「パレスホテル」というと伝統を重んじるイメージがありますが、冷凍食材の導入ハードルはなかったのでしょうか?

毛塚シェフ:社内で冷凍食材に対するネガティブな意見ももちろんでていました。ですが、冷凍技術はもうはるか最先端をいっていて、ドリップも出ないし、野菜だって生で使うより良い状態のものもある。料理の現場で実際に見て味わってきたので。

食材ごとに専門のメーカーさんがいるなら、しっかり付加価値をつけてお客さまに提供する方が満足度も高いですし、ランニングコストも抑えられます。フレンチの肝になるソースなんかも、専門のメーカーさんに依頼をして作ってもらっています。納得の仕上がりになるまでは何度もメーカーさんとやりとりを重ねますね。

ホテル業界の人材不足が深刻になっていくなかで、働き手もなかなか休みが取れない、新しい人材の獲得ができないといった課題もあります。そういった状況に対応していくためにも、最新技術や冷凍食材を取り入れていきたいですね。

安全性の面でも、製造体制が仕組化されている専門メーカーさんのほうが優れている場合も多いでしょうし。その点もスタイルブレッドさんにパンをお願いする理由のひとつです。

―まさに、かけるべきコストと抑えるべきコストの見極めですね。

毛塚シェフ:そうそう。アウトソーシングだから手を抜いているわけでも、妥協しているわけでもなくて。メーカーさんにお願いする場合でもしっかりホテルの基準で納得いくまで探しています。

ただ、コストをかけるべき部分の優先順位をはっきりさせることでお客さまに提供する価値が研ぎ澄まされていくと思うんです。抑えたコストをどこにどう転嫁していくのか。

パンについては、スタイルブレッドさんがしっかりクオリティを保ってくれるからメインの料理に集中できますね。

食品ロス率、約20%の削減。お客さまからの反響も

other_01.jpg

―スタイルブレッドのパンを使い始めて変化はありましたか?

食品のロス率が改善しました。20%ほどは削減できたと思います。以前、パン屋さんに依頼していたときは焼き立てをすぐに届けてもらっていて、時間がたつと状態が良くないので冷凍するわけにもいかず。パン粉にして使っていましたが、ロスになる分も少なくありませんでしたね。

「パンがおいしい」というお声はたくさんいただきます。種類も豊富で。あとは私たちが、どれだけ良い状態でお客さまに提供できるかですね。そこは自分たちも日々緊張感をもっています。提供するときのパンの温度帯にはとても気を遣っています。

―弊社としてもうれしい反響です!

「料理」を通じて社会課題の解決に取り組んでいく

other_04.jpg

―ホテルの外でも社会福祉活動などさまざまな取り組みをされている毛塚シェフですが、今後の展望があれば教えてください。

毛塚シェフ:そうですね。以前、授産施設(一般就労が困難な方を対象に就労や技術習得・自立支援をする施設)で焼き菓子やパンをつくるプロジェクトに参加したことがあります。

ホテルのレシピを渡せば、クオリティ高いものが出来上がります。しかし、それでは根本的な解決にならない。しっかり授産施設が主体となって売上をつくっていくための伴走をしました。レシピの見直しや食材の選び方、製法をレクチャーして、商品のクオリティが上がれば売上もしっかりついてきます。

そんな経験から、料理を通して解決できる社会課題はたくさんあると感じています。特に最近では、子どもたちを取り巻く「食」の環境にも課題がたくさんあります。

社会課題に私たちプロフェッショナルが取り組んでいくことで、世の中に広く知ってもらえる。関心を寄せてもらえる。こういった活動は、私たち「パレスホテル大宮」のブランドイメージ向上につながると思っています。

これまでより一層、地域の方々に親しみを持っていただける場所であり続けるために、ホテルに留まらない活動は続けていきたいですね。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。

■クライアント概要

スクリーンショット 2024-12-25 13.15.12.jpg
パレスホテル大宮

■シェフのプロフィール

プロフィール画像.jpg
パレスホテル大宮
総料理長 毛塚 智之 さま

パレスホテル大宮調理部門、宴会場やホテル直営レストラン7店舗を統括する。令和2年度、厚生労働省が選出する「現代の名工」受賞、令和6年度秋の褒章「黄綬褒章」を受章するなど高い評価を受ける。また、ホテル内だけでなく子どもを対象にした食育セミナーや福祉施設での活動などにも注力している。