ごあいさつ


大正時代から続くパン屋の4代目として、物心ついた時から身の回りにはパン、パン、パン、パンが溢れていました。
わたしにとってパンは別に特別の存在じゃない、空気よりも自然。だけどまだ小さい子供の時から、うちはパン屋で、パンを売って生活してるんだ、うちはパンでいきてるんだ、なんてことをよく思っていました。親父にはよく、「大きくなってもパン屋、やらなくていいぞ」「好きなことやれ」「お父さんはパンが好きだからやってるけど、パン作りは大変だし、お客さんからは汗以上のお金、もらえないからな」そんなことをいつも言われていました。
今、こうして親父の後を継いで、パン屋の4代目になり気が付くことは、やっぱり私もパンが好きだし、わたしの息子がもうちょっと大きくなったら、私も親父と同じことを言うのかなぁ?。おいしいパンが作りたい。食べ物も、食べ物以外でも、モノを作っている人ってみな同じことを考えている。人によってその想いが強かったり、弱かったり、想いが変化球になったりする。パン屋を長くやっていると、自分では美味しいと思っても、お客さんに人気がなかったり、「お客さんの為に美味しいパンを作るぞ」と思っていたのか、自分の為にパンをつくっていたのかわからなくなる。

「本場へ、美食の旅」

親父の代から付き合っているフランス料理のレストランがある。そこのオーナーシェフは驚くほど料理にこだわっている。別に最高級の素材ばかりを使い料理をするってことでなく、料理を作っている勘どころとゆうか、料理に対する姿勢にとことん、こだわりを感じる。
私が人生で2番目に尊敬する人だ(もちろん親父が1番)もう何年も前になるけど、その人から「フランス料理、美食の旅」に誘われたことがあります。「パンを作るなら、一度は本場フランス料理のパンも見ておいたほうがいいよ」「勉強だと思って行こうよ」と誘われ、昔から美味しいものには目がない私は、パンへの期待より、三ツ星レストランの料理ってどんな味がするのだろう、もう期待ワクワクで美食の度に同行しました。日本から事前に予約していたレストランは、コム・シェ・ソワァ、ル・キャ・キャルトン、ジョルジュ・ブラン、ジラルデ、ジャマンといった垂涎のレストランばかり。フランス到着2日目の夜、三ツ星レストラン・ビギナーの私はベルギーの名店、コム・シェ・ソワァ、へ向かいました。

「今まで自分が作ってきたパンとは正反対」

緊張のなか料理を注文した後、すぐに出てきたパンをみて、ガァーーン。
「なんだぁーこのちっちゃいパンは」「ぜんぜん、ふっくら焼けてないじゃないか」まわりは硬いし、ちっちゃいし、今まで自分が作ってきたパンとは正反対、いくらフランスパンは硬いといっても、こんなパン想像していません。世界最高峰の三ツ星レストランでこれはないだろうと思いながらも、そのサービスされたプティパンを食べました。
でも食べてみると素直においしい。硬いけどおいしい、ふっくらじゃないけど美味しい、少し酸っぱくて、独特の香りがあって、噛みしめるほどに増す風味は、鼻に抜けたときにやさしい味に変わってゆく。もうそれからは、どこのレストランに行ってもプティパンに夢中です。料理から料理に移る時には、パンがあると自然に1つ1つの料理の味が生きてくる。
美味しい料理と美味しいワインで昂ぶった気持ちには、パンの味わいがとても優しい。結局、このコム・シェ・ソワァではプティパン8コをお替りしてしまいました。名だたるレストランでも、それぞれパンの味わいは違いました。共通点といえば天然酵母で仕込んでいることと、どの店のプティパンも驚くほど小さいということ、かなりキツイ酸味のものやライ麦やシリアルを入れて特色を出しているもの、様々な店の様々なパンを食べた中で、私的NO1といえば、スイスの名店ジラルデのパンでした。ジラルデのパンは、香り、味わい、酸味、バリエーションに見た目のプレゼンテーション、どれをとってもNO1、レストランに併設しているブティックでは、その村の人たちに焼きたてパンも売っていると聞いて、本当に羨ましく、自分もこの村に住みたい、と思いました。

「自分もこんなパンがつくりたいという想いへ」

あの時のレストランでは、パンがキラキラ輝いていました。パンってただそれだけじゃ、極めて素朴で、シンプルだけど、料理というパンが一番役に立てる傍にいると、とっても輝いているように思えた。どんなモノでも役に立てることが一番の幸せだから。いつしか自分もこんなパンがつくりたい、自分の作ったパンをキラキラ輝かせたい。
自分の作ったパンがいろんな場所で役に立ちたい。そんな気持ちを想い続け、ゆっくりと想いを固めて、やっと作った会社がスタイルブレッドです。
雰囲気のいいレストランは輝いている、輝いているレストランは楽しんでいるのがわかる。
三ツ星レストランのギャルソンはみな口ぐせのように気軽に声をかける、「楽しんでるかい?」料理だけが目的じゃない、おしゃべりがいっぱい聞こえるレストランは、楽しむために美味しい料理が必要だし、美味しい料理に美味しいパンが必要なんだ。
どれだけ美味しいパンをつくれるか追い求めることと、どれだけそのパンが役に立てるかってことは同じように大切。私の仕事は、美味しいパンを作ることと、そのパンが役に立つ機会を見つけることになりました。パンだから役に立てる事って何かあるかな?いっぱいあるぞ。レストランはもちろんだけど、家庭のテーブルにレストランでサービスされるようなプティパンがあるだけで、腕によりをかけた手料理がディナーになっちゃう。プティパンっていろんな力を持っている、テーブルをダイニングにする力がある。様々な場面でパンを通して楽しむ時間を提供したい、パンにできる、役に立つ機会を創り、機会によってパンを楽しむライフスタイルを提案したい。できることがいっぱいある、やりたいことがいっぱいある。いろんな想いが詰まっている、スタイルブレッドのこれからです。

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